blog

2019/07/19

「髪質改善トリートメント」とは

こんにちは、YUICHIです。

皆さんは「髪質改善トリートメント」とか、「酸熱トリートメント」とか、聞いたことはありますか?

よく聞くサイ○ンス○クアなどもこちらの部類に入ります。

最近の美容業界で話題になっているメニューです。

お客様からはもちろん、メーカーさんやディーラーさんにも聞かれることが多くなってきたので、

今日は個人的な見解を書いてみようと思います。

 

「髪質改善トリートメント」も「酸熱トリートメント」も、同じものとして考えてほぼ問題ありません。

メーカーさん毎に言い方を変えていますが、中身を見るとあまり変わらない印象です。

どのメニューもキャッチフレーズとしては、

・縮毛矯正しなくてもクセが伸びる

・ダメージが出ない

・繰り返していくと髪の毛がキレイになっていく

というようなものが挙げられます。

そしてインスタ映えするとんでもないツヤ感、気になる人が多いのも頷けます。

 

BLUE TOMATOでは現在そのようなメニューの導入はしていません。

今後よっぽど優れた薬剤が出たら導入しますが、今のところは見送っています。

とは言え、どんな内容の施術なのか、説明していこうと思います。

 

「髪質改善トリートメント」や「酸熱トリートメント」と比較される施術メニューは、

ストレートパーマ(縮毛矯正も含む)とトリートメントになります。

 

少し美容師目線での説明になりますが、髪の毛は4種類の結合から成り立っています。

①水素結合

②イオン結合

③S-S結合(シスチン結合)

④ペプチド結合

の4種類です。

①水素結合は水で濡らすと切れる結合です。

寝グセを直す時など、一度濡らしてクセが直るのは、水素結合を切ったからです。

ブローなどの技術も水素結合をコントロールしています。

②イオン結合は髪の毛の内部の結合で、pHが関係してきます。

「髪質改善トリートメント」や「酸熱トリートメント」が切るのはこの結合です。

③S-S結合(シスチン結合)はパーマやストレートパーマが切る結合です。

そもそもの髪の毛の形を変えるイメージです。

④ペプチド結合は切ることがないというより、絶対に切ってはいけません。

過度にダメージを与えると切れますが、切ると髪の毛として成立しなくなってしまいます。

 

今回は②イオン結合と③S-S結合(シスチン結合)について、施術の目的と共に説明します。

 

まず、③S-S結合(シスチン結合)と縮毛矯正の関係から。

縮毛矯正の施術は、クセを伸ばすことが目的です。

⑴1液をストレートにしたい部分に塗布する

⑵一度洗い流し、乾かしてからアイロンを入れてクセを伸ばす

⑶2液をつける

というのが主な工程になります。

(これは通常のパーマの図ですが、メカニズムは同じです)

⑴の工程の目的は、クセを矯正できるように、1液の力で還元させてS-S結合(シスチン結合)を切ることです。

どのくらいの強さの薬剤でどのくらいの時間を置き、どのくらいS-S結合を切るか。

あまり切らなければクセが伸ばせず、切り過ぎれば真っ直ぐになり過ぎる、もしくはかなりダメージが出ます。

学生時代に縮毛矯正したらピンピンになり過ぎてしまった、という経験がある方は多いと思いますが、

それはS-S結合を切り過ぎてしまったことが主な原因のように思います。

⑵の工程では、S-S結合を切って形が変えられる状態になった髪の毛を、アイロンで整えていきます。

どのくらい熱を加えるかもとても大切ですが、ここでクセが伸びるかどうかは⑴の切り具合にかなり依存します。

⑶は形を整えた状態で、2液を塗布して酸化させ、S-S結合を再結合します。

このような工程を経て、髪の毛の形を変えることができます。

 

これに対して、②イオン結合と「髪質改善トリートメント」の関係はどうか。

髪質改善トリートメントの施術は、うねりを伸ばすことが目的のように思います。

⑴アルカリ電解水を塗布し、アイロンの熱を入れる(これはメーカーによりない場合があります)

⑵グリオキシル酸を塗布し、加温する

というのが主な工程になります。

⑴のアルカリ電解水は、pH11くらいの強アルカリです。

お掃除用のアルカリ電解水とほとんど変わりません。

アルカリはキューティクルを開き、髪の毛を柔らかくする効果があります。

⑵配合量が明言されていないのでなんとも言えませんが、グリオキシル酸が含まれた薬剤で急激に酸性に戻します。

pHは1.3くらいの強酸性です。

酸はキューティクルを収斂させ、固くする効果があります。

元々弱酸性である髪の毛をアルカリに傾けてイオン結合を切断し、酸性に戻すことでイオン結合を再結合しています。

このような工程で施術し、最終的に高温のアイロンで整えたものが写真でよく見る仕上がりです。

 

ここで疑問が生まれます。

アルカリ性に傾けたり、酸性に傾けたり、短時間でそこまでpHを振ってしまうことで髪の毛にダメージは出ないと言えるのか?

アイロンを使う以上、タンパク質の熱変性によるダメージは避けられないのではないか?

そもそもトリートメントと謳ってしまって良いのか?

といったものです。

 

また、クセとうねりは別物だと捉えているので、その理解も必要だと思います。

クセは毛根の形や毛穴の形から影響を受ける、ある程度先天的な原因があります。

うねりはダメージやエイジングなどの影響を受ける、ある程度後天的な原因があります。

クセはS-S結合を切らなければなかなか伸ばせないでしょうし、うねりはS-S結合でもイオン結合でも伸ばせます。

(というより、使う薬剤がアルカリ性の為、縮毛矯正ではどちらの結合も切ります)

 

調べたり実験をしたりもしていますが、僕はあまりメカニズム的に納得がいっていない、というのが導入を見送っている理由です。

もちろん薬剤や技術に精通したスタッフが行えば、ダメージは最小限で最大限の効果が出せると思います。

しかしそれは縮毛矯正でも、カラーやブリーチなども含めてどの施術でも言えることです。

 

髪質改善トリートメント、酸熱トリートメントは「トリートメント」ではないと思っています。

トリートメントという施術は、通例では失われた水分や油分、タンパク質を補う、擬似キューティクルを貼る、など、基本的に足し算の施術です。

ダメージが出ない、というイメージを持っている方が大半でしょう。

それを「髪質改善トリートメント」、「酸熱トリートメント」という名前にしてしまうことにも違和感があります。

「酸性ストレート」とか、そういう名前の方が納得がいきやすかったですね。

ただ、「ストレート」という言葉よりも「トリートメント」という言葉の方が好印象なのも事実です。

 

こういうブログを書くといつも長くなってしまいます。。笑

「髪質改善トリートメント」も「酸熱トリートメント」も、まとめると、

・アルカリではなく酸を使ったストレートに近い施術

・ダメージは出ると思う

・トリートメントという打ち出しでは導入しない

・今のところ弱めなストレートで対応できる

といったところが現状での僕の見解です。

僕のお客様でも他店で施術をされた方が何人かいましたが、

・カラーの褪色が激しい

・うねりは伸びたがダメージは出ている

といった印象です。

また、「髪質改善トリートメント」を行ったあとに縮毛矯正などをかけるとかなりダメージが出る、という声が多数なので、もし行った方は今後の施術には注意が必要です。

 

もちろん、メカニズムが明確で、より結果が出せるようになれば、今後導入する可能性もありますし、

上手に行っている方もたくさんいると思うので、それを否定するつもりはありません。

まだ出てきたばかりの技術なので、賛否両論あるのも当たり前だと思いますし。。

ただ、メリットもデメリットもある、ということは知っておいた方が良いのではないかと思います。

どんなものなのか興味がある、など悩んでいる方の参考に少しでもなれば幸いです。

 

BLUE TOMATO研究チーム YUICHI